打ち合わせの帰り、渋谷に用事があってふと西武百貨店の横を通ったら「深堀隆介 回顧展」なんて看板が。
あの金魚絵師 深堀隆介氏! 何層にも分けた透明樹脂の上に金魚のパーツを書き重ね、まるで命を閉じ込めたかのような独特の作品を生み出す、海外でも個展を開いたりメディアで取り上げられる人気作家。これはラッキー!と、すぐに入場。
彼の目を通じた金魚の妖艶美、生命感。彼の金魚へのこだわりが伝わってきた。
私は美術評論家ではないので小むずかしい分析批評を書くつもりはないですが、今回通じて感じたことは、
感動、つまり自分の心が動いた分、
人の心も動かせるということ!
結局、
自分が体験・体感し
心動かされたものは、
人の心をつかめるのだなと。
この深堀さんが金魚を書き始めるきっかけとなった有名なエピソードがある。アーティストとしての壁を感じ、「もう美術なんてやめよう」と部屋で寝転がっていたときに、ふと目に入った1匹の金魚。汚れた水槽で長年生き抜き、片目も無く身体もボロボロの金魚、キンピン。
僕は、水槽のふたを開け、
彼女を上から見てみた。
そのとき、僕の背筋がゾクゾクっとした。
汚れた水の中で、赤く光る彼女の背中は、
怪しく、そして最高に美しかった。「この子がきっと僕を救ってくれる。」
そう信じて、赤い絵具を取り出し
彼女をモデルに筆を走らせた。楽しい!楽しい!楽しい!
そして、あっという間に
金魚の大群が生まれた。
〈これだ!〉僕の探していた答えが、
ヨーロッパでもなく、
アメリカでもなく、
まさにこの部屋にあった。僕は、この日の出来事を
「金魚救い」と呼んで
大切にしている。
深堀隆介 オフィシャルサイトより
その彼の心が動き、かつ彼の美意識が加わった独自の妖艶美 といいますか、そんなものがひしひしと伝わってきました。
(※場内は撮影OKでしたので作品を一部ご紹介。)
フルダンスの狭い引き出しに閉じ込められた金魚がひしめき合うように泳いでいる姿はなんとも不思議な世界を作っています。深堀氏曰く、「金魚は閉じ込められないと生きてゆけない」のだそう。
この金魚は上から見ると、金魚にあたったライトの影が落ちてリアルですが、横からみると平べったくなっています。この場合は層で重ねる描き方ではないようです。
これは決して標本のようなものではなくて、金魚の持つ本質に僕の感情をそのまま落とし込んだ抽象画なんです。
POUCH インタビュー http://youpouch.com/2012/04/15/52142/
クッキーが入っていた透明プラのような身近な入れ物に金魚というシュール感。
せまい竹筒の中で昇るように泳いでいる金魚。
その他、水槽の中に葉と、金魚のフンだけがひらひらとする作品も。金魚不在なのに金魚を感じさせるという面白い作品でした。見とれていて写真忘れました。
こちらは、全体にゴールドのフレームがかかった縦長の平面作品。
深海にでもいるような、紺碧から黒の背景の水の中で身体を光に反射させ、幻想的に浮かび上がる、尾びれをたなびかせ、怪しげに銀のはらを魅せる金魚。
この鱗作品。著者の「金魚」へのこだわりが感じられました。
Skin-R1 (2010 キャンバス、アクリル絵の具)
Skin -W1 (2010 キャンバス、アクリル絵の具)
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この一つのテーマを掘り下げるエネルギーはすごいものです。
それだけ対象に魅入られ、心が動いたことがわかります。
私たちが感動体験をすることで、
お客さまにも感動を与えられる。
想いがあって、
それを伝える方法と技術を持てば、
第三者に同じ感動以上の価値を付けて
届けることができるってことですよね。
そのための方法や技法とは、
絵の場合は最低限の画力は必要だし、
言葉なら、文章を伝わるものにしていくこと。
そしてそれらを見せる
タイミングや場所も工夫が必要でしょうね。
すばらしい商品やサービスも、
伝え方が誤っていると伝わらない。
私の場合は、
ウェブ、マーケティング、デザインを組み合わせて
戦略的に価値を伝達する。
それを実現すること。
このように感じたことを感じてもらえるよう、
お客さまの価値を引き出すため、
日々の研究と訓練をもっと強化しないと!
そう感じさせられました。
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深堀さんの表現する美の世界を体感されたい方は、2016年5月29日(日)まで、渋谷の西武百貨店A館で開催されています(入場料500円)。